今回は、いまの暮らしかたを考えるヒントになる、「ブリコラージュ」という言葉をご紹介します。
「ブリコラージュ」とは?
ブリコラージュ(Bricolage)とは、「寄せ集めて自分で作る」・「ものを自分で修繕する」こと、「器用仕事」とも訳されます。
この言葉は、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ・ストロースが、著書 『野生の思考』で、
端切れや余り物を使って、その本来の用途とは関係なく、当面の必要性に役立つ道具を作ることを「ブリコラージュ」と呼びました。

ブリコラージュは、理論や設計図に基づいて物を作る「設計」とは対照的なもので、
その場で手に入るものを寄せ集め、それらを部品として何が作れるか試行錯誤しながら、最終的に新しい物を作ることです。
たとえば、DIYで、身の回りにある材料や道具を使って、椅子を作るようなことを言います。
また、子どもたちが、そこに集まったみんなが楽しめるように、自分たちでルールを決めて遊ぶのも、ブリコラージュ。
子どもの頃のそんな記憶、ありませんか?
わたしがこの言葉に出会ったのは、京都・有斐斎弘道館の太田達さんのお話でした。
老舗京菓子店老松のご当主であり、お茶だけでなく、文化に幅広く精通されている太田さんは、
お茶会でのしつらえ、庭やお道具などの取り合わせなど、ブリコラージュの考え方で説明されます。
持っている道具や自分の知識などをうまく組み合わせていくお茶(茶道)という日本・東洋の文化を、
フランス人の言葉で説明されることが、最初は不思議に思いました。
しかし、いろいろお茶会などのお手伝いしている中で、この考え方がしっくりしてきました。
その後、大阪大学総長などを務められた哲学者の鷲田清一さんの著書を読んだ時も、
ブリコラージュという言葉を使われていて、だんだんこの言葉が身近になってきました。
お茶会という高尚なものだけでなく、
今、いろんな制約がある中で、できることや持っているものを組み合わせたり、工夫したりすることで、
新たな楽しみを作り出していくのも、ブリコラージュで、この考え方が大切ではないかと思います。
家の中のどこかに眠っているものが、新たな光を浴びるかもしれません。
今あるもの同士を組み合わせることで、おもしろいことができるかもしれません。
そんな視点で、身の回りを、見まわしてみてはいかがでしょうか?
