Design Week Kyotoレポートの第2弾は、西陣織の「桝屋髙尾」さんです。
桝屋髙尾さんは、徳川美術館の門外不出のふくさの復元を依頼され、
その時に開発した独自の糸で織りあげる「ねん金綴錦」で有名です。

皇后陛下のドレスなども製作されています。
西陣織ができるまで
着物ができるまでには、本当にたくさんの行程があり、西陣の場合はそれが分業されていることはわかっていましたが、
お話を聞くと、たしかに手間がかかっていることが実感できましたし、驚くことばかりでおもしろかったんです。
まずは、デザインを考えて紙におこします。それが下の写真の奥の紙です。

それを実際にどう織っていくか、方眼紙のようなものに、落とし込んでいきます。ひとマスが糸8本分だそうです。
これが上の写真の手前の紙です。
この時点で、デザイン画をどう糸で表現していくか、たとえば、ぼかしをどう表すかなどを考えます。
手織りの場合は、この方眼紙を下に置きながら、織っていきます。
機械織りの場合は、情報を穴あきの厚紙のようなものに落とし込むか、フロッピーディスク、今はUSBに入れて、織っていきます。

この桝屋髙尾さんは、糸が特殊です。
カイコのまゆを帽子の形に伸ばした、帽子まわたから糸をとります。

ちなみに、第4弾でレポートする、まわたふとんでも同じまわたから作られます。
この帽子まわたから糸を引き出していくと、糸の太さが均一ではなく、
太かったり、細かったりと、ランダムな太さの糸になります。
これに、金銀様々に光る箔を巻き付けていきます。
この糸が桝屋髙尾さん独自の糸、「ねん金糸」です。

こうすることで、まわたの糸の太さがランダムなので、
光の当たり方によって、色彩が変化して、きらきらと輝きます。
拡大鏡でみせていただいたのですが、確かに太さが変化していて、ずっと見ていられる感じでした。
この糸は、徳川美術館のふくさの復元をする際、今まで見たこともない糸が使われていて、
復元するために、研究して、開発された糸だそうです。
この糸を織るために、糸巻に巻いて、たて糸と横糸の準備していきます。



この糸を使って織られるのが、「ねん金綴錦」とよばれる織物です。
糸の太さが一定していないため、織る時に糸と糸がからまりやすく、とても慎重に見ていないといけないそうです。
そのため、機械織の場合にも、機械に任せっきりにはできず、一人に一台ついてみないといけないそうです。
ここでは、引箔と呼ばれる、和紙に金箔などののせて、切った和紙の糸を使って織られるところもみせていただきました。
ちなみに、引箔は、このあと第3弾でレポートする、西村商店さんで製作過程を教えていただきました。
そして、150㎝幅の手織りの機もみせていただき、大きさにびっくりしました。

伝統工芸士の方にお話をお聞きすると、
「難しい注文でもいろいろ工夫したり、どうしたらよりよい物ができるか考えて作るのが楽しい」とおっしゃっていました。
見学してみての感想
普段は完成品しか目にしませんが、作り手の方の思いを知り、大切に織られていることがわかりました。
また、現場の空気感に触れることができ、親近感と愛着がわいてきました。
見学の中で何度もおっしゃっていたのが、「準備が大事」だということです。
本当に繊細なことをされているので、事前の準備をしっかりしておかないとうまくいかないそうです。
これは、自分に振り返ってみても、日常生活でもとても大切なことだと思いました。
西陣織は説明を聞くだけでも理解が難しいと思いますが、
工房の方々が、本当に丁寧にわかりやすく、そして、楽しく教えてくださり、織物のよさを肌で、心で感じることができました。