DESIGN WEEK KYOTO2020 レポート~川島織物セルコン~


DESIGN WEEK KYOTO2020レポート、その4は、川島織物セルコンさんです。

川島織物セルコンさんは、織物の総合メーカー。

帯など呉服だけでなく、カーテン地や歌舞伎などの舞台の幕である緞帳の製作など幅広く作られています。

今回は、現場の職人さんとじっくりお話しできるコースを選びました。

全体では大人数でしたが、まわる時は5人の少人数で、ご一緒した方もフレンドリーな方々で初対面ながら楽しくまわれました。

まわった中でも、とてもおもしろかったところをご紹介します。

現場では撮影禁止だったので、パンフレットなどから写真を撮っています。

爪がギザギザ、綴織

着物の帯を手で織る時に、緯糸(よこいと)を寄せるために、爪をギザギザにされています。

聞いたことはあったのですが、実際に見るのは初めて。

 

普通は緯糸1本通したら、トントンと一気に寄せますが、一部だけ寄せるには細かい道具が必要になります。

 

日本髪に使われる柘植櫛(つげぐし)のような道具も使われていますが、細かいところは爪が道具に変わります。

絹糸を扱うこともあって、ひっかからないように、また爪も道具なので、とても手をきれいにお手入れされていました。

爪のギザギザは2~3週間に1回爪やすりで研ぐそうです。

また、中指がメインで、爪が割れたりした時のためのサブが薬指と人差し指だとか。

ギザギザの深さも職人さんによって、違っておもしろかったです。

職人さんの高度な技術が必要な羅織

着物の夏物のコートなどに使われる、羅織。透かして織っていくにはとても高度な技が必要です。

ここでは、緯糸(よこいと)を水に濡らして、濡れた糸を織り込んでいきます。

これは、糸が戻ろうとするのを防ぐためだそうです。

 

ここで職人さんのお話で印象に残ったことは、「織物は生きている」という言葉。

温度や湿度、気候によって、伸び縮みするため、織っている間も、完成してからも、そして実際に着物を着る時も、ずっと生きているとおっしゃっていました。

出来上がったら一定の大きさに固定されるというイメージを持っていたので、

丁寧に織られたものが生き続けていると思うと、いっそう大切にしたいという思いが出てきました。

 

そして、ここで織られたものが京都迎賓館にもあるとお話されて、

わたしは、なぜか、ぱっと以前行った京都迎賓館のそれがわかりました。

ついたてのようなもので、白い生地の中に文様が細かく織られていて、綺麗でじっと見ていたからかもしれません。

京都迎賓館の藤の間の舞台の横にあります。

ここで織られたものが迎賓館でも見ていたと思うと、偶然のつながりがうれしくなりました。

大きさに圧倒された緞帳

緞帳は舞台の幅だけあるので、織られる現場も広大で、20m以上手織りの装置が続いています。

それを6人くらいの職人さんが横に並んで、順番に織りすすめられていました。これも手織りです。

 

完成までにはかなりの時間がかかる、気の遠くなりそうです。織るために使われる糸(おもにレーヨン)は毛糸の太いようなものです。

織りあげるとかなりの重量になり、1tを超えるものもあるとか。職人さんが何人もかかって移動させ、大変だそうです。

巻いても大きく重いものなので、専用のトラックに載せて納入されるそうです。

これぞ職人芸の配色

織物の下絵を描いた後に行われる、配色。

どこにどの色を使うかを決めて、設計図である下絵に書き込んでいく工程です。

ここでは、東山魁夷さんの本当に同じような色を使って書かれた作品を織物にする際の配色をされていました。

見た目同じ色だと思えるようなところを、画集とサンプルの糸とを比べながら指示を、次々と書き込まれます。

サンプルの糸は同系色で400~500色あるそうです。

ひとつひとつ、色を見極め、決めていかれる職人さんにプロの技を感じました。

そして、配色は製作工程の中でも肝になるところだと思いました。

見学してみての感想

今まで見てきた中で一番大規模で、分業ではなく、社内でほぼ完成するので、製作過程がとてもわかりやすかったです。

また、各職人さんとゆっくりお話しでき、疑問に思ったことに答えていただけたので、とてもおもしろく、もっと時間があったらいいのにと思ったほどです。

 

さまざまな織物の種類も見ることができ、やはり日本で培われてきた織物の奥深さ、さまざまな工夫・知恵を強く感じました。

それを継承していくことは大変なことだと思いますが、ほんとうにいいものがこれからもあり続けてほしいと思うばかりです。

 

そして、どこかで出会う織物、緞帳、カーテンに、職人さんの顔を思い出すと思います。

 

ちなみに、この工場見学は、スタンプラリーにもなっていて、それぞれの現場でお話しした方から、その方の似顔絵シールをもらって完成しました。

特徴がよくとらえられていて、よく似ています。

そして、プレゼントもいただきました。緞帳に使われる糸でつくられたストラップです。