DESIGN WEEK KYOTO2020レポート、その3は、宏和染工所さんです。

宏和染工所さんは、糸染めを専門にされているところです。
絹糸や一部カーペット用の糸を、注文の色になるように染め上げていかれます。
絹糸を染める

カイコのまゆから取った生糸(上記写真、一番左)は、触ると硬い感じがします。
これを精練をして(上記写真、左から2番目)、不純物を除去してから、染めます。
精練後の糸は、柔らかく、光沢が出てきます。
そして、糸に色を入れていきます(上記写真、右側3つ)。
糸は、90℃以上の染料に入れます。これ以下の温度では、色が入らずムラになるそうです。
糸の分量が少ない時は、鍋に入れ、手で回しながら染めます。

一部を取って、乾かして色を見て、足りない色を足しながら、化学染料の場合は30分くらいで染まるそうです。
糸を乾かすのは、塗れている時と色が変化するからです。
一瞬にして、サンプルとの色の違い、足りない色を見分けるところが凄かったです。
量が多い時は、機械に入れて、染めます。

染料には、化学染料と天然染料があります。これらは、レポ―トその2でご紹介した田中直染料店さんから仕入れされているそうです。

その2でも書きましたが、天然染料の場合、染まりやすくするためにいれる媒染剤とよばれるもの(アルミ、錫、鉄など)によって、仕上がりの色が変わります。
実際にどのように違うのか、糸を見せていただきました。
この写真は、コチニールという虫からできている染料での媒染剤による違いです。

こちらは、同じ紫の糸も、アルミと錫(スズ)で色が変わります。触り心地は同じように思いました。

化学染料の場合は、薬品を入れれば色を抜いてリセットすることができるそうですが、
天然染料の場合は、1回濃く染まってしまうと薄くすることができないので、染める時は土日などまとまって時間が取れる時に、半日以上かかって、慎重に染められるそうです。
これだけでも、化学染料と天然染料の、染料自体の希少性もさることながら、手間のかけ方違いも、値段の違いにあらわれることがわかりました。
ちなみに、天然染料だと、化学染料の場合の3倍ほどの値段になるそうです。
また、実際の現場を見せていただいて、気付いたことは、とても天井が高く、一部が開いています。
これは、染める時に出る蒸気を逃がすためだそうで、夏は暑く、冬は開け放した状態になるので、寒いそうです。

そして、電気がないことです。天井からも自然光を取り入れています。

これは、糸染めが自然光の元での色で合わせることが多いからだそうです。
自然光での色で合わせるか、蛍光灯の下での色で合わせるかは注文を受ける時に確認されるそうです。
実際、自然光と蛍光灯で全く色が違うように見える糸も見せていただき、色の変化に驚きました。
見学してみての感想
糸染めを初めて見せていただき、繊細な色の違いを見分けるプロの目に驚きました。
わたしが見ると、同じ色に見えるものも、何色が足りないのかを瞬時に判断されます。
天井が高く開いていたり、自然光の中でのお仕事だったり、やはりものづくりに適した建物の構造だったり、仕事のしやすい造りになっていることもわかりました。
織物として完成する糸が、1色1色ていねいに染め上げられていると思うと、着物を見る目も変わってきますし、今回のことを思い出すような気がします。