DESIGN WEEK KYOTO2020 レポート~佐藤喜代松商店~


DESIGN WEEK KYOTO2020レポート、その1は、佐藤喜代松商店さんです。

佐藤喜代松商店さんは、漆の生産だけでなく、さまざまな商品と漆のコラボをされたり、漆を使った教室をされていたりしています。

 

今回の体験は、

・漆ができるまでを知る+漆の精製のミニ体験(手クロメ体験)

・漆の精製工場の見学

・さまざまな商品とのコラボについてお話

の3つです。

 

漆ができるまで+手クロメ体験

漆は、ウルシノキの幹に傷をつけ、そこから出てきた樹液を取ったものです。

日本では、ウルシノキは10年から15年で漆が取れるようになり、6月~9月に手でかいて採取します。

1本の木から採るのは1シーズンのみで、その後切り倒されます。

なお、1本からとれる量は約200gです。

 

国産のものは少なく、95%は輸入されています。

 

この木からとったものを生漆(きうるし)といい、ウルシオールが60%、水が30%含まれています。

この生漆から水分を3.5%程度までとばすのが、精製作業です。

 

今回体験した手クロメは、この水分をとばすミニ体験。

ガラスの上に、生漆をのせ、ヘラで広げたりまとめたりします。この時、熱を当てたりして、乾燥させました。

最初は、色も不透明で、どろっとした感じでした。

水分を飛ばしていくと、透明でテリのある色に。感触もさらっとしてきました。

 

これをガラスに薄く伸ばして、さらに乾燥させます。

一緒に体験したロシアの方々と、塗った漆の厚さはそれぞれに、実験です。

わたしのは、下の写真の右から2つめです。

乾燥させた後、見てみると、薄く塗ったらきれいに乾いていますが、

厚く塗った方のものは、表面だけが先に乾いてしまい、縮んでしまっていました。

わたしのは、下の写真の一番右、下のものです。

この体験から、漆を均等に薄く塗るのは難しく、高度な技なのだと思いました。

精製現場の見学

今回手で体験した漆の精製ですが、実際は大規模に行われています。

購入した原料の生漆から、まずゴミなどを取り除きます。

この方法が面白く、綿を生漆の中に入れ、撹拌して、綿にゴミを吸着させます。

網でこすと、ゴミが網目につまってしまうからだそうです。

次に、遠心分離機に入れ、綿などは上に、きれいになった漆は下から流れ出るようにします。

 

そして、精製。一度に25㎏の漆の水分を熱で飛ばします。半日くらいかかるそうです。

撹拌する羽を上の方につけるか、容器の底近く、下の方につけるかで、ツヤなしのマットなものか、ツヤのあるものかにわけられるそうです。

 

その後、色を入れるものは、色を練り込んで完成です。

設備は大掛かりなものではなく、手のかかる部分が多いことや、木樽がたくさんおいてあるのが印象的でした。

 

漆の可能性~さまざまな商品とのコラボ~

漆は漆器や祭に使われる道具、着物の織物に使われる金銀糸など伝統的な使用方法に加えて、新たなものにもたくさん使われています。

その中で驚いたのは、漆を全面に塗った車です。時間の経過による漆の厚さの変化のデータもみせていただき、おもしろかったです。

また、エレベーターの扉にも採用されているとのことで、後日、上京区役所に行って、実物を見てきました。

黒く光っていて、蒔絵も入り、とてもきれいでした。

体験してみての感想

今回、ロシアや韓国の方と一緒になり、ロシアでは白樺の木から漆を取ることや、韓国では漆を食べる鍋があることなど、

他の国での文化も垣間見ることができ、またみなさん興味津々でいろんな質問をされていて、とても楽しい時間でした。

また、初めて漆の原料をみたり、扱ってみたりして、少し身近に感じるようになりました。

漆がさまざまなところに使われており、可能性も感じました。