お寺のシンボル的な五重塔、京都市内でも何個かあります。
醍醐寺の五重塔を見ながら、どこが違うのか、気になり、くらべてみました。
醍醐寺のレポートはこちらを。

五重塔とは?
五重塔は、仏塔の形式の一つで、層塔と呼ばれる楼閣形式の仏塔のうち、五重の屋根を持つものをいいます。
下から地(基礎)、水(塔身)、火(笠)、風(請花)、空(宝珠)からなるもので、それぞれが5つの世界を示し、仏教的な宇宙観を表しているそうです。
仏塔は、古代インドにおいて仏舎利(釈迦の遺骨)を祀るために紀元前から造られ始めたストゥーパが起源。
ストゥーパは、饅頭形(半球形)でしたが、中国に伝えられると、楼閣建築の形式を取り入れて高層化するようになり、この形式が朝鮮半島を経て日本へ伝えらました。
京都市内にある五重塔は4つ
京都市内にある五重塔は、
①東寺
②醍醐寺
③仁和寺
④法観寺八坂の塔
の4つです。
ひとつずつ、みていきましょう。
京都のシンボル、東寺の五重塔

東寺は、平安京の南に作られた羅城門の東に国家守護のために創建されたお寺です。ちなみに、当時は西寺もありました。
空海(弘法大師)が創建した五重塔は、没後9世紀に完成したといわれています。
しかし、度重なる火災等で焼失し、現在の塔は、5代目で、1644年徳川家光の寄進で建てられ、国宝となっています。
高さが54.8mあり、日本一の高さを誇る木造塔です。
京都タワーや高層ビルが建つ前は、東寺の五重塔より高い建物を建ててはいけないといわれていました。
また、京都市は盆地で、北へ行くほど標高が上がっているので、北大路通(船岡山付近)と東寺の五重塔の高さは同じくらいと言われています。
日本一美しいと言われる、醍醐寺の五重塔

世界遺産の醍醐寺にある五重塔。こちらは、平安時代の951年に建てられ、京都府内最古の木像建築で、日本で3番目に古い五重塔(ちなみに一番古いのは奈良の法隆寺)です。
高さは、38mあります。
五重塔の美しさの基準、「逓減率」に注目
五重塔を見る時に、マニアックですが、重要な逓減率(ていげんりつ)をご紹介します。
通常、塔の形は、上層へいくほど、軒の出や塔身の横幅が順に小さくなっていきます。
これを「逓減」といい、初層(いちばん下の層)に対する最上層の幅の割合のことを「逓減率」といいます。
上層と下層の差が大きい塔は「逓減が大きい」、ほぼ同じ幅のまま立ち上がる塔は「逓減が小さい」という言い方をします。
たとえば、最上層が初層の半分だと、「逓減率は0.5」であり、塔はどっしりと安定感のある姿となり、逓減率が0.7だと、塔はすらりと背が高くみえます。
醍醐寺の五重塔は、逓減率が0.6で、最も美しく見える黄金比だとされています。

ちなみに、奈良法隆寺の五重塔の逓減率0.5です。東寺の五重塔の逓減率は0.7、仁和寺の五重塔は、0.68です。
逓減率に注目しながら、塔のフォルムを見ると、違いが見えてくるように思います。
ぜひマニアックな逓減率に注目してみてください。
どっしりとした仁和寺の五重塔

世界遺産の仁和寺にも、五重塔があります。こちらも、東寺と同じ、徳川家光の寄進で1644年に建てられました。
そのため、東寺の五重塔と建築様式がよく似ており、上層から下層まで、各層の幅にあまり差がみられない姿が特徴的です。
高さは、36mです。
東山のシンボル、八坂の塔

八坂神社の近くの街中にそびえたつ八坂の塔は、法観寺の五重塔です。
聖徳太子の創建と伝えられ、1179年に焼失した塔を源頼朝が再建しましたが、落雷により焼失し、
現在の五重塔は、1440年、室町幕府六代将軍足利義教が再建したものです。
高さは46mで、日本で3番目に高い(1番は東寺)五重塔です。
五重塔くらべのまとめ
お寺 | 宗派 | 五重塔の 高さ | 創建 | 指定 | 特徴 |
東寺 (世界遺産) | 真言宗 | 55m | 1644年 | 国宝 | 日本一の高さを誇る木造塔 |
醍醐寺 (世界遺産) | 真言宗 | 38m | 951年 | 国宝 | 京都府内最古の木像建築 日本で3番目に古い五重塔 逓減率0.6で、最も美しく見える黄金比 |
仁和寺 (世界遺産) | 真言宗 | 36m | 1644年 | 重要文化財 | 東寺の五重塔と建築様式がよく似ている |
法観寺 | 臨済宗 | 46m | 1440年 | 重要文化財 | 日本で3番目に高い五重塔 |
五重塔くらべ、いかがでしたか?
普段なにげなく目にするものも、くらべてみると、特徴が見えてきます。
ぜひ、五重塔の美しさを実際に目で見て、確かめてみてくださいね。