今回は、ラグビー日本代表ジャージ(ユニフォーム)に散りばめらた、柄、特に吉祥文様について、ご紹介します。


初めて立体化した、桜のエンブレム
まずは、いちばん目立つ、桜のエンブレム。
ラグビー日本代表のシンボルでもある、桜が、今回初めて3D化され、ゴム製の素材で触るとゴツゴツします。

そして、テレビなどで見ていると、見えにくいのですが、
赤と白のジャージには、よく見ると、日本伝統の吉祥文様があしらわれています。
勝利を祈願する吉祥文様
前回大会までは無地でしたが、
今大会のジャージには、「力・ならわし・縁起」を意味する吉祥文様(縁起のよい図柄)が生地に描かれています。
どんな柄があるのか、それにはどういう意味があるのかをご紹介します。
無限に広がる、青海波(せいがいは)

青海波は、扇型を交互に重ねて波を表したものです。
波は穏やかに無限に広がり、続いていくことから、未来の平安を祈る吉祥文様です。
歴史はとても古く、埴輪の衣装などにも見ることができます。
古代ペルシャから、シルクロードを経て、飛鳥時代に日本に伝わったといわれています。
青海波という名は、雅楽の舞曲の題名で、
源氏物語では、主人公の光源氏が舞うことでもよく知られ、この文様をほどこした装束を着ていたため、
青海波という名前で呼ばれるようになりました。
江戸時代、勘七という塗師が、この文様を得意とし、巧みに描いたことから、「青海勘七」と呼ばれ、流行しました。
今でも、日用品などさまざまなところで用いられています。わたしも、青海波の柄の入ったレターセットを持っています。
まっすぐすくすく伸びる、魔除けでもある、麻の葉

正六角形の内側に、6つのひし形が放射状に広がる幾何学的な文様です。
見た目が麻の葉に似ていることから、こう呼ばれるようになりました。
麻は成長が早く、繊維が通気性に優れ、江戸時代以前は衣類として最も広く使用されていた素材です。
神事では、お祓いに用いられ、麻の葉文様は魔除けの吉祥文様とされています。
江戸時代には、歌舞伎役者の岩井半四郎が「八百屋お七」役、嵐璃寛が「お染」役で、
麻の葉文様をあしらった衣装を着て、大流行しました。
それ以来、町娘役には定番の文様となりました。
また、麻は、虫がつかず、まっすぐ丈夫にすくすく育つことから、赤ん坊の成長を願って、
産着をはじめ、着物や小物にも多く用いられました。
現在でも、着物や帯以外にも、工芸品や建具などに用いられる文様です。
繁栄を願う、入子菱(いれこびし、いりこびし)

入子とは、箱や器の中に同じ形の小さな箱や器が何重にも入っているものをいいます。
入子菱は、菱形が二重三重に入っている吉祥文様です。
菱形の模様は、古くは、縄文土器に見られるほどです。その形が、水草の菱の実に似ていることから、こう呼ばれるようになりました。
菱の繁殖力がとても強いため、子孫繁栄や五穀豊穣の願いを込められています。
奈良時代には正倉院の染織品にも多く見られ、平安時代になると、貴族の衣裳の文様として用いられました。
直線だけで描きやすかったことも、広く普及した理由の1つといわれています。
この菱形から発展した図案は多くあり、入子菱もその1つです。
入子菱は、1つの菱の内に、さらに幾つかの小さい菱をいれたものです。
内部の菱が、何重にもなっているものが最も一般的ですが、大小各種の菱を組み合わせて納めたものなど、さまざまなものがあります。
江戸時代の初期には、能装束の唐織などにかなり精緻な入子菱が現れました。
季節に関係なく着やすいこともあって、現代でも着物や帯などに多用されています。
ラグビー日本代表ジャージからひもとく、日本伝統の吉祥文様、いかがですか?
残りの文様は後編でご紹介します。